自然栽培では、菌との共生について語られる事が多いかと思いますが、私の経験の範囲での話、共生だけでは満足のいく野菜を作る事が出来なかったので、慣行農法をベースに無施肥、無農薬での栽培に今年から切り替えました。
とは言え、私自身、慣行農法の経験はほぼ無く、営農塾で習ったものと、農業法人でアルバイトとして働いて得た薄い知識が元になっています。
足りない部分は、走りながら得て行こうと考えていますが、今回は、肥料設計の前段階、土壌診断についてお話しして参ります。
4月13日 土壌診断用土の採取
去年から仕込んだ畑を、今年から借りてメインの圃場として使わせてもらいます。
採取場所は、そこから2ヶ所、古くから借りていた畑が1ヶ所、田んぼが1ヶ所、育苗用土て1つ。この計5ヶ所を診断して頂く事にしました。
採取方法は、表土を少し削って省き、移植用のシャベルを縦に1本分、均等に取って使いました。これを5ヶ所それぞれ袋に入れて、少し乾燥させてから地元のJAさんに出しました。
費用は、1カ所税込330円でした。
提出してから結果が出るまで1週間ほど。
安くて早く重要な情報が得られるので、物凄く助かります。
診断結果
全体的に見ると、思っていたより悪くはありませんでした。
むしろ、考えていたより良かった所もありました。
それでは、1つ1つ見て参ります。
圃場A
去年から仕込んだ新しい畑の高い場所で、作付けの品目は、ジャガイモとミニトマトです。
グラフを見ると、リン酸が少なくカリウムが多い様です。
カリウムが突き抜けて多いので、苦土/加里のバランスが良くないみたいですね。
表を見ると、CECが23.3と良好な値。
硝酸態窒素も0なので良好。エンドファイトが起きやすく、リン酸の吸収がしやすい状態かと思います。
栽培しながら、毎年土壌診断をして形のいい7角形と、適切なCECを作っていきたいです。
実際の栽培状況としては、去年よりジャガイモの生育が早く、同時に雑草の生え方に勢いがあって、油断したため雑草を手で取る事になってしまいました。
圃場B
同じく新しい畑ですが、低い位置の部分です。
作付け品目は、タマネギを想定していますが、秋の植え付けになります。
グラフを見ると、圃場Aとあまり変わりがありませんが、石灰が少ないのでその分pHが低くなっています。また、苦土も少ない様です。
表を見ると、CECは良好。石灰が足りてないためpHが低い。石灰が少なため石灰/苦土のバランスが良くなくて、リン酸が多く、圃場Aと同じく苦土/加里のバランスも良くない様です。
こちらは、硝酸態窒素が出ているのが気になる所です。
圃場C
こちらは、就農すぐから借りている畑で、去年までの栽培方法でガリガリに痩せてしまい、雑草すら少なくなった畑です。
一応、人参栽培を想定して診断して頂きました。
グラフを見ると、悲しくなるくらいですが、なぜか加里だけは足りてる様です。
表を見ると、やはりCECが足りてないため、カリウム以外の全てが足りていません。
この状態では、夏の種播きに間に合わないと思います。
もう1年、有機物の投入や畑作りをして休ませます。
客観的な数字を見ながら、色々な事が判断できる様になったので、その辺りは良かったと感じています。
圃場D
ここは、田んぼです。
あまり気にしていませんでしたが、費用が安かったので、ついでに診断して頂きました。
グラフを見ても、ほぼ問題はない様です。
表を見ても、自然栽培的には問題にならなと思います。
ただ、カリウムが多いので根張りが良くなり、稲穂の背丈が伸び過ぎて倒伏の危険は感じます。ですので、強めに水切りをするか、または密植するかしようと考えています。
マグネシウムが多めにあるので、有機物が足りていれば光合成がしっかり行われるので期待大です。
圃場E
こちらは、育苗用土です。
ナス名目で診断して頂きました。
去年までは、雑草堆肥と畑の土を混ぜた物を使っていましたが、今年は畑で作った雑草堆肥に庭の土を混ぜた物を使いました。
庭の土を掘ったところ、庭の土が黒いのに気が付き、試しに使ってみようと考えたからです。
グラフを見ると、適正値のラインが他と違うので、栄養素がとてつもなく大量にある様に見えますが、そこは補正して見ます。
所々、分析値の赤い線が写っていませんが、適正値の内か外かだけは判断出来ますので、今までと違いリン酸が足りています。
加里は相変わらず多く、苦土もあります。
石灰がやや足りない様で、石灰/苦土と苦土/加里のバランスは良くない様です。
表を見ると、CECがずば抜けて多く40.4と出ました。
今回診断して頂いた5ヶ所の中で、硝酸態窒素が1番多く出ています。庭は、狭くて平なので、雨による流亡が少なかったのかも知れません。
また窒素以外の4大栄養素も、圧倒的多いのが分かります。
やはりCECを上げて、4大栄養素の流亡を防ぎ、バランスの良い栄養状況を作るという考えは正しいのかも知れないと、少し安心感を覚えました。
診断表には、肥料設計の助けになる処方箋の欄や、おすすめの肥料欄もあり、全ての農家の助けになると思いました。
終わりに
一般に、この後の行程は施肥となりますが、自然栽培では使えない肥料も多く、私は、なるべく使わない方法で栽培しています。しかし、推奨される栄養素の値になる様に、畑は育てなくてはなりません。
育て方の考え方や実務は、また別の記事に書いていますので、そちらも読んで頂けると幸いです。
なお、営農では売れる収穫物を得なくてはならないので、推奨された値とかけ離れた結果が出た場合、腐植酸資材や有機の規格で認められた物の投入は、私個人、構わないのではないかと考えます。
コメント